「ミネラル」の基礎知識
ミネラル(mineral)は、糖質、脂質、蛋白質、ビタミンと並び五大栄養素の1つで無機質、灰分とも言います。
ミネラルはビタミンと同様にごく微量で体の機能維持や調節に欠かすことの出来ない栄養素です。ミネラルは、人間の体内で作り出すことができないため、食べ物から補うしかない。
ミネラルは16種類で主要ミネラルは7種類、微量は9種類、で人間の体の約4%で残りの約96%は炭素(C)・水素(H)・酸素(O)・窒素(N)の4つで作られています。ミネラルは体液量や酸・アルカリ度の調整、筋肉や神経のはたらきの調節にも欠かせない。さらにビタミンと同様に、炭水化物やたんぱく質、脂質などの代謝にも深く関わっている。ミネラルは不足すると様々な欠乏症が発生します。たとえばヨウ素欠乏による甲状腺腫や鉄欠乏症による貧血はよこ知られた例です。反対ミネラルは所要量の数倍程度で私たちの身体に害を与えてしまうこともあるのです。
ミネラルの主な役割
@身体の構成材料として働く(骨や歯など硬組織やその他の軟組織)
力ルシウム・リン・鉄など
A生体機能の調節を行う(体液中にイオンとして存在し、浸透圧の調節や酸アルカリ平衡、筋収縮や神経の情報伝達に働く)
カルシウム・ナトリウム・カリウム・マグネシウム・塩素・リンなど
Bたんばく質などと結合して働く(酵素の補助因子、ビタミンやホルモンの構成成分となる) 酵素……マグネシウム・マンガン・銅・亜鉛・鉄・セレンなど ビタミンB12……コバルト 、甲状腺ホルモン……ヨウ素など
ミネラルの一般知識
カルシウム(Ca)
カルシウムは 体内に成人で約1Kg含まれます。
血液中には一定のカルシウム量が必要です。
働き: 心臓や脳の働き, 筋肉の収縮,ホルモンの分泌,血液凝固など
Ca:Pの比が: 1:2〜2:1の間
カルシウムは腎臓で作られる活性型ビタミンDで吸収が促進されます。
体内のカルシウムの99%は骨と歯を構成する成分(貯蔵カルシウム)です。
女性ホルモンとも関係があり閉経後は骨からカルシウムを溶けることを妨げていたホルモンが減少し骨からの流出が進みます。
所要量 |
成人男子700mg(30歳以上は600mg) |
許容上限摂取量 |
成人 2500mg |
多く含まれる食品 |
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欠乏症 |
骨粗鬆症・歯がもろくなる・成長障害・神経過敏 |
過剰症 |
食事からはない体内では高カルシウム血症(ビタミンDの過剰からくる) |
成人の体内に約0.5〜0.8 Kg含まれます。
リンは90%リン酸カルシウムとリン酸マグネシウムの形で骨や歯の
主成分となります。それ以外に血液中ではリン酸塩として 血液の酸
やアルカリを中和する働きをします。リンの摂取量が多すぎると カルシウムの吸収が悪くなるのでインスタント食品や加工食品の摂りすぎには注意が必要です。
目標摂取量 |
成人700mg |
許容上限摂取量 |
成人 4,000mg |
多く含まれる食品 |
牛乳・乳製品・卵黄・肉・魚、ピスタチオ |
欠乏症 |
歯がもろくなる・骨粗鬆症 |
過剰症 |
副甲状腺機能亢進(2g以上)軟組織 のカルシウム沈着 |
体内に 約30g含まれます。
★ 70%はリン酸マグネシウムとしてカルシウムと共に骨や歯に存在します。
★ 慢性的な摂取不足は:虚血性心疾患を引きおこすことやマグネシウム投与によって高血圧・動脈硬化・糖尿病などの症状が改善されることが解りこのような病気の予防のためにも必要なミネラルだとされるようになってきています。
★ マグネシウムはふだんから食事をきちんと摂っていると不足する心配はありません。
目標摂取量 |
成人男子300〜320mg |
許容上限摂取量 |
成人700mg(50歳以上は650mg) |
多く含まれる食品 |
魚肉類・バナナ・デーツ・ほうれん草・ごま・大豆・ワカメ・レーズン |
欠乏症状 |
心悸亢進・神経興奮 |
過剰症 |
腎臓障害のある人は注意が必要 |
体内に約100g含まれます。
★ 細胞の外液の 浸透圧を一定に保つために調整する働きをします。 また体液のアルカリ性に保ったり 筋肉・神経の興奮を弱める働きもします。Kを多く摂るとNaの排泄が増し 過剰による害を防ぐことができます
★ 普通の状態で欠乏することはありませんが ひどい下痢や嘔吐・発汗のあとでは不足することもあります。
目標摂取量 |
食塩として10g未満 |
多く含まれる食品 |
食塩・醤油・味噌・塩から・佃煮・ハム・ソーセージ・蒲鉾・インスタントラーメン |
欠乏症 |
食欲減退・精神不安 |
過剰症 |
慢性的には高血圧・胃潰瘍・動脈硬化などを招く |
体内に約200g含まれます。
ヒトの体内でカリウムは、カルシウムとリンに続いて3番目に多く、体重1kgあたり約2g、 全体の98%が組織の細胞内液に存在しています。
★血球・細胞の内液に多く含まれます。Naと共に細胞内の浸透圧の保持酸アルカリ平衡の保持に重要な働きをしています。
★ ナトリウムを排泄する働きがありKを摂ることで高血圧などの予防に役立ちます。水分の摂りすぎによって排尿が増えたときなど カリウムも一緒に排泄されてしまうので 十分に摂ることが必要です。カリウムは生の野菜や果物・芋・豆類・海藻などに多く含まれますが水に溶け出てしまうので茹でる・煮るなどの調理によってかなり失われてしまいます。
所要量 |
2,000mg |
多く含まれる食品 |
バナナ・スイカ・リンゴ・柿・セロリ・ジャガイモ・牛乳・デーツ・ワカメ・鮎.グリーンレーズン |
欠乏症 |
筋力低下・腸壁緊張 |
過剰症 |
腎臓の機能障害者には高カリウム血症 |
★塩素は食塩の構成ミネラルで 体内では 酸塩基平衡や浸透圧の調節をする働きをします。(血液など)胃液の中では塩酸として含まれ 消化酵素のペプシンを活性化し 食べ物の殺菌作用や消化促進に働きます。また膵液の分泌促進にも役立ちます。塩素は 食塩として摂取するので不足の心配はありません。食塩には 高血圧などの予防のために摂りすぎの心配がありますが それはナトリウムのほうで 塩素は多く摂ると汗や尿に混じり体外に流れ出てしまうので過剰症の心配はありません。 また 塩素は水道水の殺菌消毒に使われていますが 塩素の入った水は腸内細菌の繁殖が悪くなると言われビタミンB群の合成が障害されます。
所要量 |
2500mg |
多く含まれる食品 |
食塩 |
欠乏症 |
胃液の酸度が低下する・食欲不振 |
★ 赤血球のヘモグロビンや筋肉のミオグロビン 肝臓のフィリチンに含まれます。
★ 鉄は ビタミンCと一緒に摂ると 吸収がよくなりますので 植物性食品は鉄の吸収をよくするためには ビタミンCや蛋白質と一緒に摂ることが吸収率アップに繋がります。体内の細胞に酸素を運ぶ役割を果たしています。
★不足すると貧血になりやすく、また疲れやすくなります。
所要量 |
成人男子10mg 成人女子12mg |
許容上限摂取量 |
成人 40mg |
多く含まれる食品 |
レバー・肉・卵・マグロの赤身・プルーン・レーズン・葉菜類・ホワイトマルベリー |
欠乏症 |
鉄欠乏性貧血 |
体内に約75〜150mg含まれています。
体内に広く各種の臓器に分布して存在し 酵素の成分にもなっています。
銅は 腸管からの鉄の吸収を助け 骨髄でのヘモグロビン生成のとき鉄の利用をよくする働きをしています。
貧血の予防や治療に 鉄とともに必要です。
所要量 |
成人男子1.8mg |
許容上限摂取量 |
成人 9mg |
多く含まれる食品 |
レバー・ココア・チョコレート・カキ・エビ・ゴマ・大豆 |
欠乏症 |
貧血・骨折や変形 |
過剰症 |
食品からはない 銅製食器や鍋に酸性食品を保存すると中毒を起こす |
体内に約2g含まれます。
★ 若者の間で多い味覚障害は亜鉛不足が原因と言われています。
★ 生殖器官の発達にも影響を与えているので熟年者のミネラル
ともいわれています。亜鉛は広く細胞全体に存在し働きは
DNAや蛋白質の合成に関与しています。 血漿中の亜鉛は
ほとんどアルブミンなどの蛋白質と結合していて
★ 免疫機能に関係します。
★ 糖代謝にも必要でインシュリンの合成や作用発現に必須のミネラルです。
★ 亜鉛の所要量は 鉄と同じくらいとされていますが 尿や汗の中に排泄される量は 鉄の十倍も多く
★ ダイエットや運動によって不足しがちになります。 また加齢によっても 尿中の排泄量が増えます。 亜鉛は DNAや蛋白質合成に関係している細胞分裂に必要なため 不足すると免疫機能が低下します。 亜鉛は植物性蛋白質と一緒に摂ると吸収が促進されます。
所要量 |
成人男子11〜12mg |
許容上限摂取量 |
成人 30mg |
多く含まれる食品 |
カキ・レバー・ウナギ・たらこ・ホタテ・ピスタチオ・高野豆腐・さんま・ささみ肉・デーツ |
欠乏症 |
子供では 成長障害・鉄欠乏性貧血 |
過剰症 |
通常はない2g以上とると急性中毒をおこす |
セレン(selene)は抗酸化作用がありビタミンEと一緒に働くとこの作用がより効果を発揮します。
癌の抑制作用効果を持ちます。
体の細胞の膜などには不飽和脂肪酸がふくまれますが不飽和脂肪酸は酸化されやすいため 酸化によって体に有害な過酸化脂質を作ってしまいます。この過酸化脂質は老化を早めたり癌や動脈硬化の原因となるのですが このときセレンとビタミンEがあれば これを抑制してくれます。
また 体内では 水銀・カドミウムなどの公害物質と結びつき働きを軽減するなど 体に有害な物質から体を守ります。 セレンは摂りすぎると毒性が現れ中毒を起こす心配のある成分です。
所要量 |
成人男子50〜60ηg |
許容上限摂取量 |
成人 250mg |
多く含まれる食品 |
わかさぎ・いわし・かれい・ホタテ・牛乳・リンゴ酢・ネギ・ビール・カキ・たら・牛肉・玄米 |
欠乏症 |
日本人の通常の食事での欠乏はない |
過剰症 |
吐き気・爪の変性・脱毛(一日300ηg以上の摂取) |
マンガン(Mn)
体内に約20 mg含まれます。
★骨にはたくさんのミネラルが含まれておりCa・Pはよく知られますがマンガンも骨の石灰化に必要なミネラルです。
また関節を丈夫にする結合組織の補酵素としての働きもあり成長期には発育を促進するために不可欠です。
糖質・脂質・蛋白質の代謝に働く酵素の成分でもあり エネルギー作りや蛋白質の体内合成に関係しています。
★マンガンは全体として 細胞の活力を高める働きをしており 不足すると骨などの発育不全・傷の治りが遅い・インスリンや甲状腺ホルモンの合成不良・エネルギー不足による不活発などがおこります。
所要量 |
成人男子4mg 成人女子3.0〜3.5mg |
許容上限摂取量 |
成人 10mg |
多く含まれる食品 |
玄米・大豆・アーモンド・カキ・デーツ・納豆・小豆・いちじく |
欠乏症 |
通常の食事での欠乏はほとんどない |
過剰症 |
大量に体内に入るとあるが通常はない |
体内に約20〜30mgくらい存在します。
甲状腺ホルモンの成分としてや 発育を促進・エネルギー産生を高めるなどの働きをしています。
体内にあるヨウ素の約半分は 甲状腺に存在し甲状腺ホルモンのチロキシンとトリヨードチロニンを作る材料になります。
これらのホルモンは 交感神経を刺激して 蛋白質や脂質・糖質の代謝を促進します。
不足すると 体がだるい・鈍いなどの症状が現れたり 子供では発育が遅くなったりします。海に囲まれた日本では 海草類を摂っていれば不足の心配はほとんどありません。
所要量 |
成人150ηg |
許容上限摂取量 |
成人 3mg |
多く含まれる食品 |
昆布(だし汁も含む)・ワカメ・イワシ・サバ・海苔・かつを・ぶり・寒天 |
欠乏症 |
甲状腺腫・甲状腺機能低下症 |
過剰症 |
甲状腺腫・甲状腺ホルモンの生成低下症(2mg/H) |
コバルト(Co)
体内に 約1.5mg含まれます。
★コバルトは ビタミンB12を作る材料としての働きが中心となっています。体内に存在するコバルトの15%は ビタミンB12を構成する成分として存在し悪性貧血の予防 神経の働きの正常化 バイオリズムのの正常化などに働いています。
多く含まれる食品 |
レバー・肉類・魚介類・乳製品・ |
イオウ(S)
イオウはシスチンというアミノ酸に含まれ 体内でも蛋白質やアミノ酸と結合して存在します。健康な毛髪や皮膚・爪を作るために重要な成分です。軟骨・骨・腱を作る成分にも含まれています。また ビタミンB1やパントテン酸と結合して補酵素となり 糖質や脂質の代謝に働いています。 これ以外にも 有害なミネラルが体内に蓄積されるのを防いでくれたりもします(解毒)。
多く含まれる食品 |
魚介類・肉類・卵・牛乳 |
欠乏症 |
皮膚炎・しみ 爪がもろくなる髪が抜ける |
過剰症 |
ない |
モリブデン(Mo)
肝臓や腎臓の中の いくつかの酵素を助ける働きをしています。 また 糖質や脂質の代謝を助けたり 鉄の利用を高めて貧血の予防をします。そのため 鉄欠乏貧血の人には必要といえるミネラルです。また尿酸の代謝にもかかわっています。
所要量 |
成人男子30ηg 成人女子25ηg |
許容上限摂取量 |
成人 250ηg |
多く含まれる食品 |
牛乳・乳製品・納豆・豆類・穀物・レバー |
欠乏症 |
貧血・疲労 |
過剰症 |
心配はないが 5〜10mg/日とると毒性と考えられる |
体内では クロムの中でも3価クロムが重要な働きをしています。3価クロムは 糖質や脂質の代謝を良くする働きがあり 糖尿病や動脈硬化との関わりで注目されています。 これは クロムが 腸内細菌からGFTというクロム化合物に合成され インスリンの作用をよくすることから 糖尿病を予防し 血中のコレステロールを正常範囲に保ち 動脈硬化や高血圧を予防すると考えられているためです。
所要量 |
成人男子30〜35ηg 成人女子25〜30ηg |
許容上限摂取量 |
成人 250ηg |
多く含まれる食品 |
野菜・穀類・海産物・肉・魚 |